MOTRITAMIWさんのポーチハンカチ

ゆるやかな物語の世界から不思議な生き物たちがちょこんと飛び出した刺繍。
ハンカチとして使えるのはもちろんのこと、
ポーチとしてメジャーやソーイング、キャンディーやティーバッグ、リップクリームなどなど、
ポンとしまえる、使い方いろいろ楽しめる丁度いい大きさのポーチハンカチです。

「河辺の岩のカッパ」
河辺の岩に座ってさ。
カッパはおやつの胡瓜をポリリ。ポリ。
実は昨日アイツに負けた相撲が悔しくて。悔しくて。
ひとり反省会中ってワケなんだそうだけど
その胡瓜も可哀想だからって云ってアイツがくれたヤツなワケ。
もうね踏んだり蹴ったりなワケなんだけどこのアイツがつくった胡瓜がまたンマイのなんのって。
なんだよアイツってば完璧じゃん。
クソムカツクヤツなんだそうだけどアイツは何故かカッパが大好きなんだって。ってことはだよ。
完璧なアイツが大好きって思わせてるカッパは超完璧ってこと?
そう云ったらさ、カッパのお皿が一瞬ピンクに色づいたのボクは見逃さなかったよ。

「ぽっこりお尻漁のカモ」
朝早くからカモのお尻漁が始まる。
勢いよく頭を水中に突っ込んだかと思うとお尻浮き輪が
ポコリ ポコリ ポコリ ってね。
いやもうなんだかさ。カッコイイか?って訊かれたらどうあってもカッコワルイんだけれど。
なんでこんな仕様で確立しちゃったんだって話なんだけれど。
世の中不思議なモノやコトってけっこうあるね。
でもってそーゆの楽しいね。うんうん、ポコリ ポコリ。

「サーカス・スターのナマケモノ」
お洒落な帽子を被ってさ、ナマケモノ登場。
三角旗のロープをさ、ユルリニタリと渡ります。
ぽう。
なんたってわがサーカスの花形スター。
お客さんすべてを優雅な眠りの世界に誘う超絶ロースピードが売りなのでございます。
ぽう。
呑気と根気と元気と鈍気。
可愛いカラダに詰め込んでユルリニタリと歩むのが彼のプライド。
ぽう。
そうそうお尻を掻いたら拍手の合図。
みなさん盛大にお願いします。
ぽう。
ぽう。


「軒下のアマノジャク」
隣の家の軒下の物干しに赤い鬼。
時々ひっくり返ってぶら下がってコッチ見てる。
ワタシが「コッチ見るな!」って云うと
ソイツは「コッチ見ろ!」って云う。
ワタシが「見ないよ!」って云うと
ソイツは「ジロジロ見るよ~♪」って歌う。
ワタシが「メンドクサイ!」って呆れると
ソイツは「オモシロイねぇ!」って笑う。
なんか釣られて面白くなってきちゃって。「アハハ。」って笑っちゃうと
ソイツも「アハハ。」って。
あれアマノジャクじゃなかったの?

「大きな樹のてっぺんのテナガザル」
独りぼっちのテナガザルは
お気に入りの大きな樹のてっぺんからぶら下がって世界を観ていました。
ここから観る世界は少し窮屈そうで少し不自由そうな感じがしたもんですからね。
彼はほんのちょっとカラダを揺らしてみます。
そうすると枝がサワサワと鳴って世界は今度は少し踊っているように見えました。
彼は次にほんのちょっと腰を振ってみます。
すると世界はなんだか笑っているみたいで。
独りぼっちのテナガザルは明日この樹から降りてみようと決めました。
ふと自分もね、この世界に参加してみたくなったんですって。

「爪みたいな月夜のコウモリ」
爪みたいに細く欠けた月の夜。
コウモリはその光の粒を全身に浴びています。
切なさや儚さがいっぱい詰まった粒たちは
ちょっと淋しいのではあるのだけれど心地よくもあるのでした。
静かなエネルギーはコウモリの鼻腔を通ってほろ苦い懐かしさを辺り一面に振り撒きます。
こんなに美しい世界が此処にはあるのです。
コウモリはそっと枝にかけた指で暗い木肌を撫でました。